──この街には、決して越えられない「雲」がある。 ずっとずっと、夜空の輝きを遮ってきた雲がある。 だから、星空が遠すぎて。 小さな願いは、いつしか大きな憧れへと変わっていった。 雲に包まれたこの街で。 満天の星空を夢見る少女たちがいる。 ──これは、柔らかくゆるやかな日々に、淡い夢を見るお話。 ■□■ストーリー■□■ ──どこまでもどこまでも── それは、空が青く澄み渡っていた日の朝。 巽の家を出た策は、この街へとやってきた。 空明市。 まるであの空を切り取り、名刺代わりに差し出されたような名の。 ──どこか優しく頬を撫でていく、この街の空気。 「お前は好きに生きなさい」 あの厳格な祖父にそう告げられた時、策は自分が巽の者として失格した事を理解した。 わかっていた事だ。 ずっとずっと昔から、わかっていた。 それでも受け入れてしまう事はできなくて、諦めきれなくて、無様に努力だけを続けてきた。 父のように。 兄のように。 自分にだって、巽の家に生まれついた者が持っていて当たり前のものがあるのだと、認めて欲しかった。 けれど今、自分はここにいる。 祖先が住んでいたという、古ぼけた屋敷が目の前にある。 「巽の者を代表して、誰かがあの街に行かなければならない」 祖父がそう告げた時、ろくに内容も確認せず、策は話に乗った。 それが、あの家から出る理由となるのなら。 この街の優しさに少しだけ甘えながら。 新しい生活が始まるのだと。 そう決心して、これから住まう事になる屋敷の門を潜った── これは、柔らかくゆるやかな日々に、淡い夢を見るお話。 ……そして、ゆっくりと。 ゆっくりゆっくりと、 雨が降り積もっていく物語。 ■□■登場キャラクター■□■ ●唯井 ふたみ (CV:遠井実瑠) 「オマエのヨメだ」と、策の前へ唐突に現れた少女。 とにかく無表情で、入居したばかりの屋敷に結婚を前提として引っ越してきた。 結婚を意識しているからか自ら進んで家事を引き受け、文句一つ言わず見事にこなす、 家事全般が得意な少女……というか、家事ジャンキー。 得意技は「善意の追い込み」。 「コミュニケーションにおける妥当な言葉の選択」が根本的に間違っているので、 本人は慰めているつもりだが、相手に逆効果なのは勿論、最悪、自殺寸前まで追い込んだりする。 だが、やっている事そのものはとても思いやりに溢れている。 その為、『裏ボランティア』『逆懺悔僧(ぎゃくさんげそう)』『超聖母』などと 数々の異名で呼ばれている。 『双子座』の天文委員であり、策を騒動に巻き込む張本人。 「知らないのか?本当に無知なオトコだな。 ヨメというのは、無休無給で一生こき使われる家政婦の総称だぞ?」 ●桜守姫 此芽 (CV:風華) 空明市における名家・桜守姫家の息女。 古い歴史を持ちながら、未だ成功者のいない『照陽菜』 ──しかし「彼女ならば、もしかして」と期待されている『乙女座』の天文委員。 立ち居振る舞いは非常に優雅であり、育ちのよさと共に 理知的・良識ある気遣いがうかがい知れる人格者で、常に周囲から尊敬と羨望を集める。 その様は「お嬢様」というよりも、策曰く「物語から飛び出したお姫様」。 彼女のすごいところはその風貌にまったく違和感がない事であるのだが、 初対面のはずの策を前にしてひどく動揺し、なぜか嫌われる方向へ努力を始めた。 とはいっても他人を侮辱・中傷するような言動をそもそも取る事をしない(できない)性格であるので、 本人は頑張っているつもりなのだが、素敵に弾けた空回りっぷりを見せる。 彼女の今後の課題は、もっとひどい事が言えるようになる事である。 「こ、これだけ申し上げてもおわかりになられませんか。 其方は、ば、ば、ば……、えと、やっぱりこういう言い方は……あっ……お、お馬鹿ですねっ!」 ●明日宿 傘 (CV:北都南) 独特の不思議オーラを振り撒く、おっとりとした先輩。 策の一つ年上で、『獅子座』の天文委員。 分け隔てなく誰にでも優しい皆のよきお姉さんで、ふたみには殊の外に慕われている。 ときどき突拍子もない事を言い出すが、 彼女が口にすると本当にそうなのではないかと思えてしまうから不思議だ── 周囲がどれほど険悪なムードであっても、ただそこにいるだけで癒してしまう。 その時点ですでに、彼女のアスク時空に呑み込まれているという事なのだが。 恐ろしいほど食い意地が張っており……というか、そんな次元はすでに超越している食の王者。 彼女が肌身離さず持っている和傘は謎が多く、なかから様々なものが飛び出す。 「恋人とか、夫婦とか──片思いの相手とか、友達とか、そんな事は関係ないよ。 自分の心にいつの間にか住み着いちゃった人は、やっぱり大切な存在なの」 ●未寅 愛々々 (CV:中瀬ひな) ふたみに懐いている『牡羊座』の天文委員。 友達にはメメと呼ばれる。 この街の願いが形となった幻想的な空間、『空明の里』管理者の娘。 常に元気いっぱいで明るく、屈託のない笑顔で笑うムードメーカー。 ただし、ふたみにちょっかいをかけると魔人モードに移行。 実は学園最強の武闘派。 どうやら此芽をよく思っていないようだが……? 「じゃ、策。覚えておいて。愛はいつだって、おねーさまの味方だって事。 例えおねーさまが間違っていても、愛はおねーさまの味方をするの。忘れないで」 ●透舞 のん (CV:安玖深音) 此芽を慕う『牡牛座』の天文委員。 みどのの親友。 とにかく気が強く、短気な面も手伝ってトラブルを拡大するが、 性格的にそう見えないだけで、実はなかなかの頭脳の持ち主。 此芽を人生の手本としており、少しでも近付きたいという欲求からか、 言動もどこかしら彼女の真似が入っている。 会う度に此芽に喧嘩を売るふたみに対して突っかかるが、 無自覚で売っている事もなんとなくわかっているので、毎回、なんだか切ない気持ちになる。 結構、苦労性なのかもしれない。 「そうですっ!ようやくお姉様の偉大さをご理解なされましたかっ!?」 ●桜守姫 みどの (CV:韮井叶) いつも親友のんの背後に隠れている、『蟹座』の天文委員。 此芽の妹。 必然的に周囲に持ち上げられ、気付けば話題の中心となっている姉に比べて 極端に影が薄く、性格的にもかなりの引っ込み思案で、消え入りそうな小声で話す。 姉が大好きで、いつも影から見つめている。 「好き」という気持ちを堂々と表す事ができるのんを羨ましく思っており、 自分の性格が姉妹でありながらどこか他人行儀な空気を作ってしまっている事に悩んでいる。 「姉に何かご用でも……?」